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2007.01.19 美術館の可能性
私は美術館によく行きます. なぜなら, 展覧会を楽しむだけではなく, 建築家の作品を気楽に体験できる, というメリットがあるからです.
と, いつも楽しませてもらっている美術館なんですが, 最近はいろいろとおかしなことが起こっているみたいです. いったい, どんなことが起こっているのか?それを詳しく教えてくれるのが『美術館の可能性』(学芸出版社,
2006)という本です.
『美術館の可能性』の著者は、元学芸員で美術作品を研究している並木誠ニ氏と近代都市計画史を専門とする建築史家の中川理氏です. 両氏共に京都工芸繊維大学の教授をされています.
前半は, 美術館という概念や、それを取り巻く制度の曖昧さを鋭く指摘する並木氏の熱い語りが展開されます. 一方の後半は、建築表現の場としての美術館,
美術館というイメージを活用した街づくり, といったテーマについての中川氏の冷静な論説が続きます.
建築家による美術館を学芸員の立場から強く批判する美術史家と、美術館の枠組みをどんどん解体しようとする建築家の仕事を評価する建築史家. 微妙にねじれた両者の関係に,
混迷を極める美術館の変貌ぐあいが垣間見えます.
近年, 金沢21世紀美術館や青森県立美術館など, 建築家による話題作が次々にオープンしています. その一方で, 芦屋美術博物館のように, 存続の危機に立たされ,
先行き不透明なまま不安な日々が続いているところもあります. これから美術館はどうなっていくのでしょうか. この一冊を読むだけで, いつもの美術館をこれまでとは違った角度で見ることができますよ.
UZULAB-ma.
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